税効果会計とは
税効果会計とは、貸借対照表又は連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得の計算の結果算定された資産及び負債の金額との間に差異がある場合において、当該差異に係る法人税等の金額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益の金額と法人税等の金額を合理的に対応させるための会計処理をいいます(計算規則2③二十四)。
要は・・・
非常に難しい書き方となっていますが、
差異部分に係る法人税等の影響額を会計上に反映することを求めるものです。
《具体例》
○売買目的有価証券の含み益が100ある場合(税金30%)
⇒会計上「有価証券100/有価証券運用益100」
⇒税務上「有価証券100/有価証券運用益100」
と、相違がないため、税効果は認識されません。
○不動産に含み益が100ある場合(税金30%)
⇒会計上:仕訳なし(含み益は、売却時まで実現しない)
⇒税務上:仕訳なし(含み益は、売却時まで実現しない)
と、相違がないため、税効果は認識されません。
ただし、M&Aの交渉の場合
M&Aの交渉段階の場合、交渉材料の実態純資産を把握するにあたり、企業の適切な時価を把握する必要がありますので、税務上は仕訳がないものの、会計上は含み益を認識します。結果、会計上と税務上に差異が生じることとなり、追加で仕訳を起票(税効果を認識)することとなります。
⇒会計上の仕訳①:「不動産100/含み益100」
仕訳②(税効果)の仕訳の意味は、「実際に不動産が売却された場合、売却益100に税務上30課税されるため、売買目的不動産の含み益の認識時点で、予め売却時の課税に備えた30の税金に関する仕訳を認識する」との意味になります。
このように、M&Aで企業を買収する際は、単純に考えますと
○含み益に税効果を認識すると企業価値が下がる⇒買い手有利
○含み損に税効果を認識すると企業価値が上がる⇒売り手有利
ですが、企業価値の上昇は後述の通り、「繰延税金資産を認識するか」の論点となり将来計画等にも左右されることとなります。このため、交渉の余地はありますが、事前準備が非常に重要になる論点となります。あくまで参考のお話です。
○保有不動産の時価が簿価より著しく低く、減損会計を適用する場合
税務上:仕訳なし。
この場合、会計上と税務上に差異がありますが、税効果を認識するかは、
「場合による」が正解です。
具体的には、以下の3つを考慮し、繰延税金資産を認識するかを決定します。
①将来の課税所得の十分性
②タックスプランニングの存在
③将来加算一時差異の十分性
【具体的場面】
【場面1】
来年、含み損のある不動産を売却し、かつ、十分に課税所得が見込まれる場合。
⇒実際に不動産が売却された場合、売却損100に節税効果があります。課税所得が十分なため、税効果30の利益を享受できるので、繰延税金資産の仕訳を認識します。
場面2:基本的に赤字会社で、翌期以降も課税所得が見込まれない場合。
「仕訳なし」
⇒通常、不動産の売却損は課税所得が減るため税金が減りますが、対象会社の事業が赤字の場合には、課税所得が不十分なため、そもそもの税金負担がありません。このため、税金の節税効果30の利益を享受できないと判断し、繰延税金資産の認識を行いません。